印南まちづくり基金:地域にともす希望の光 廃校のツリープロジェクト⑤
印南まちづくり基金は、平成25年に龍谷大学などが連携し印南町内に設置した地域貢献型メガソーラー施設「龍谷ソーラーパーク」の売電で出た収益の一部を、まちづくりに関わる活動や住民が主体となって取り組む団体の課題解決に役立ててもらい、豊かな地域社会の創造と発展を目指し設立した基金です。
今回は、この基金を活用したまちづくりの一例として、地域にともす希望の光 廃校のツリープロジェクトの取り組みを紹介します。
いよいよ点灯式の日が訪れました。ツリーにはあらかじめ集めた町の人たちの願いやメッセージが吊るされています。式典が始まる頃には地域の人たちも続々と集まり、点灯の時を待っていました。準備を進めてきた山びこ塾メンバーの表情にも緊張とこの日を迎えた嬉しさがにじみます。
式典では山本塾長が「試験点灯の際、年配組の目が小学生になっていくのを見て、これが真妻のためになると確信しました。これまで続けてきたイルミネーションの火を絶やさないことが目標でしたが、結果、それを大きく超える成果となって感激しています」と目を潤ませつつ挨拶。
続き、真妻住民でもある日裏町長も「私もこの校舎とメタセコイアを見守ってきた地域の一員。昔はグラウンドの一部として植わっていたこの木が校舎を追い抜き、今は上から眺めている。その成長に対して人口は減り続けているけれど、このメタセコイアを起点に真妻を作っていこうという若者たちの力が形になった。ぜひ印南町の成長につなげてほしいし、行政でもしっかり応援したい」と語りました。
このツリーに使ったLEDは1万球以上、おそらく県内ではトップ規模のイルミネーションツリーとなります。当財団の有井代表理事から今回のいきさつや印南を誇るTシャツの意味を説明。
和歌山市で11月から開催するイルミネーションイベント「フェスタ・ルーチェ」のサテライト会場として協力を快諾してくれた株式会社タカショーデジテックの古澤社長も集まった住民の笑顔を前に「若い人たちが地域を想う気持ちに打たれました。我々も『光でつなぐ和歌山』を目指しています。この場所もぜひその1つとしてつなげたい」と顔をほころばせました。
来賓の挨拶が続いた後、いよいよ点灯の時。刻々と夕闇が迫るなか、固唾を飲んで見守る人々。カウントダウンに合わせてメタセコイアに光が灯った瞬間、大きな歓声と拍手が起こりました。
点灯後は、みんなが集めた思い出の写真を校舎に投影しながらの親睦会。ツリーの前で記念撮影をしたり、懐かしそうに校舎のスクリーンを眺めながら語り合う姿があちこちに見られました。
また、後日開催したイベント「真夏の登校日」では点灯式のさらに何倍もの人が集まり「登校日」にふさわしい大賑わいに。お盆帰省に合わせていたこともあって世代も実に幅広く、小さい子連れ・孫連れで訪れる人たちの姿も多かったのではないでしょうか。
「真夏の」と呼ぶにふさわしい気温の中、山びこ塾メンバーも熱気十分、張り切って唐揚げやドリンクなどを販売しました。他にもポップコーンやたこ焼き、すじどて、パンなどさまざまなフードブースが出店。中には鮎やアマゴの炭焼きもあり、都会から帰省した人たちも「山の味」を堪能しました。
この日のプログラムは学校になぞらえて社会、理科、算数、体育などの時間割で構成。社会の時間には真妻と印南の歴史を問う○×ゲームを、算数の時間には数字を合わせるビンゴ大会を開催し、最後は体育の時間で餅まきを実施。
夜の校舎から投げられた餅が空を舞うファンタジックな光景はきっと訪れた人の忘れられない思い出になったのではないでしょうか。
人口減少問題に捉われず、自分たちの住む地域を魅力的なものにしたいという想いから始まったこのツリープロジェクト。世代を超えて取り組むことで自分たちの地元愛を再確認すると同時にさまざまな人を動かす取り組みとなりました。
※多くの人の心にも光を灯したメタセコイアのツリーイルミネーションは、11月2日のフェスタ・ルーチェ開催と共にで再び点灯されています。