お知らせ

印南まちづくり基金:地域にともす希望の光 廃校のツリープロジェクト①

 

inami2018 

印南まちづくり基金は、平成25年に龍谷大学などが連携し印南町内に設置した地域貢献型メガソーラー施設「龍谷ソーラーパーク」の売電で出た収益の一部を、まちづくりに関わる活動や住民が主体となって取り組む団体の課題解決に役立ててもらい、豊かな地域社会の創造と発展を目指し設立した基金です。

今回は、この基金を活用したまちづくりの一例として、地域にともす希望の光 廃校のツリープロジェクトの取り組みを紹介します。 


 

場所は、和歌山県日高郡印南町の山間部、切り目側上流に位置する「真妻地区」。多い時には15001600人いた人口は現在約600人。世帯数でいうと300を下回りました。

 

人口減少にともなう消滅可能性都市が発表されて5年。地方、とりわけ沿岸部より川上にあたる山間部では如実にその未来が近づいていっているのを感じます。真妻でまた人口減少と同時に仕事や店舗がなくなったりと、さまざまな課題を抱える地域。このまま放っておけば、確かに過疎が進むだけなのは目に見えています。そんな現状を打破しようと、長らく休眠していた「真妻やまびこ塾」から印南まちづくり基金に申請がありました。

 

 真妻小学校跡地に集まる若者と山びこ塾のメンバー

20193月某日、廃校となった旧真妻小学校に集まったのは2030代の若者を中心とした約20人。そして、その若者達のちょうど父親世代にあたる真妻やまびこ塾の創設メンバーでした。ほとんどの人が、この場所に集められた理由を知りませんでした。

 

 

やまびこ塾の山本さん 7

そんな中、口火を切ったのは「真妻やまびこ塾」の山本育男塾長。真妻やまびこ塾とは、1997年に町主導で地域の資源や活性化の取り組みについて研究・協議した「山村振興等農林漁業特別対策事業印南町山村等活性ビジョン等」のメンバーを中心に結成された任意団体。当時は地域活性に向けて様々な活動を行なっていましたが、長く休眠状態にありました。

 

山本塾長が地域の現状と共に話しはじめたのは、この地域で続いているクリスマスツリーについて。春なのにクリスマスツリー? 春なのにクリスマスツリー?と思う人もいるかもしれません。実はこの場所に続くクリスマスツリーがあるのです。

 

 真妻小学校とメタセコイヤの木

旧真妻小学校の校庭に佇む1本のメタセコイアの大木。約30m以上とも目される高さがあり、隣の校舎以上に天高く伸びる、まさにシンボルツリーといった堂々とした姿で佇んでいます。

 

このメタセコイアは、約25年前から毎年冬になると工事用の赤いライトで電飾が施され、地域のクリスマスツリーとして親しまれてきたのだそうです。廃校となってからも変わらず地域のシンボルとして愛されてきたツリー。今回、印南まちづくり基金に申請があったのは、その電飾をLED電球にリニューアルすることでした。

 

その報告であれば、たくさんの人を集める必要はありません。塾長らの狙いはただイルミネーションをアップデートすることではなく、「これを足がかりに地域の活性化に向けて取り組んでいけたら。そのためにも自分たちよりも若い人たちにアイデアを出してもらいたい」という思い。そう、若い血を入れての真妻やまびこ塾の復活でした。

 

 4

申請の経緯を事前に聞いていた当財団の有井代表理事から、より明確にイメージを描けるよう「持続可能なまちづくり」の必要性や地方創生の流れについて、また近隣の有田川町で行われているまちづくりの事例を説明。住民が主体となって「自分たちが集いたくなるが場づくり」を実現していったことでカフェやベーカリーや醸造所など、さまざまな場所や仕事が生まれている有田川町。その現状を聞くにつれ、参加者の、中でも若者たちの目の色が着実に変わっていくのがわかりました。

 

「そもそも、彼らの考える『真妻』はどんなところだろう? 」と質問を投げかけたところ、「働くところがない」「飲みにいく店がなく、市街地まで行くと代行に5000円かかる」と最初こそ遠慮がちに不満が漏れたものの、話すうちに徐々に空気が変わり「この辺りでは清流で鮎や鰻を獲って遊べる」「新産品として注目されているキクイモの生産は真妻が県内一だと思う」など、次第に地域自慢に帰着。そこから見えてきたのは「地域が好きでここにいる」という彼らの本音や誇りでした。

 

 

8

ツリープロジェクト

さらに意見を交わすうちに「高校生レストランのようなものがあればどうか」「子どもを遊ばせられる公園がほしい」「いっそセコイアだけでなく校舎全体をイルミネーションで包んでは」「昔あった夕涼み会みたいなお祭りをしたい」など、未来を見据えた多彩なアイデアに発展。それを聞く山本塾長をはじめ、集まった親世代は「やまびこ塾ができた時は自分たちも色々と考えた。でも有田川やこの子たちと明らかに違うのは、どんなアイデアも誰かがやったらええのにな、だったこと」と振り返り、今後、若者たちをバックアップしながら、再び地域づくりに取り組む決意を固めたようです。

 

 

真妻が目指すのは「観光で訪れたい地域」である前に「暮らしたい地域」として自分たちで地域の魅力を作ること。そのためのサポートを地元力財団が行います。

 今回の校庭のツリーイルミネーションから、今後どんな風に地域の姿が変わっていくのか、真妻やまびこ塾と真妻地域の挑戦がはじまりました。

 

プロジェクト②につづく